【書籍レビュー】教養悪口本 著者:堀元 見 おすすめ度★★★★☆
- 概略
- タイトルが悪い
- 目次がMECEじゃない
- 不親切なアイコン
- ターゲット:いまのままでいいんだよおじさん
- ターゲット:ダブルチェックダブルチェックおじさん
- ターゲット:ちょっとおくれますおじさん
- ターゲット:人脈自慢おじさん
- ターゲット:ネットで見た言葉すぐ使うおじさん
- ターゲット:結婚はいいぞおじさんへ
- ターゲット:きれいごとおじさん
- ターゲット:毎朝あたりまえ体操するおじさん
- ターゲット:オフ〇コ希望おじさん
- ターゲット:盗品市場おじさん
- ターゲット:漫画好きおじさん
- ターゲット:好きなだけ食べていいんだよおじさん
- ターゲット:1円まで割り勘おじさん
- ターゲット:倦怠期おじさん
- ターゲット:童貞こじらせおじさん
- ターゲット:インスタ映えおじさん
- ターゲット:プライバシーをまもるおじさん
- ターゲット:夢見る中退おじさん
- (番外)考えてほしかった悪口
- おわりに
概略
軽妙な語り口、こだわったレイアウトやインデント、空行の取り方など読みやすさを切り詰めているため、すいすい読める。
しかし、著者らしさというか全編にわたって衒学が出ている。
まるでガンダムの話がわかる女の子を見つけたときのオタクのようである。
言いたいことは1つか2つなのに、それを膨らませて10も20もしゃべる。そんな書物であった。
それを衒学として読むか、雑学として読むか。そこで評価が分かれそうだ、
著者のことを知ってから読むとさらに趣がある。サンプルで面白い!と思えるなら買って損はないだろう。
以下は本書を読んでの僕の突っ込みである。
タイトルが悪い
本書の読みは「インテリわるぐちぼん」、漢字で起こす場合「教養悪口本」である。
SNS盛んな昨今Twitterをはじめ拡散・宣伝が必要なのだが、このタイトルでは「教養悪口本」や「インテリ悪口本」の表記ゆれが出る。ファンの間では「教悪本」となっているので既に3兄弟だ。
宣伝担当も「どっちで行きます?」と頭をひねったことだろうし、
ハッシュタグ検索にも混乱が出るし、きっとエゴサーも2回しているに違いない。
この表記ゆれに対してこっそり悪口を言いたい。
「ブレイブルーかよ!」
解説:アークシステムワークスの格闘ゲーム。英語表記はBLABLUEなのだが、
ブレイブルーやブレブル、BBなどファンの間でも表記がゆれまくった。
ニコニコ動画で同サイトでいくつも宣伝しているのだが、
表記ゆれがタグつぶしとなってしまった。
※ ニコニコ動画では固定タグ以外は視聴者がつけて盛り上がる要素があった。
目次がMECEじゃない
そもそも悪口が出る対象は主に対人であるから、立項するならそれに則すべきで、
職場・学校、友人・知人、家族、異性・恋人、他人(日常の人、ネットの人)ぐらいである。
本書の中でも対人でないものは3例しかないし、3例で立項している章もあるなら別枠を設けるか、無理やり擬人化すればいい。
娯楽とネットは明らかに包含にあるし、
娯楽にある、「違法アップロード~」は明らかにネットである。
某衒学者が見たら、「MECEじゃない!」と発作を起こすレベルの分類わけである。
不親切なアイコン
各悪口を示すアイコンが1章の前にあるがおかしい。アイコン内容は以下の通りだ。
1.一見悪口じゃない。
2.初心者でも使いやすい。
なるほど。どこもおかしくはない。しかし僕はすぐに戸惑った。
一発目の悪口にこのアイコンがついてない!
一番最初で、この書籍のコンセプトを表す場所なのに!
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本文に入る前にいつまで喋ってんだ?となりそうなのでようやく入る。
内容はかなりぼかしたり、本書とは別の表現にしていること、ご了承願う。
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ターゲット:いまのままでいいんだよおじさん
解説に使われる引用元が結果論である。
挑戦するか、待つか、いつだって2択である。
挑戦が失敗を招くことがあるのは、著者もラジオでよく言及しているはずなのだが。。。
やや不平等なので対義語として、「人生、なんでもチャレンジだぜ」という人に向けた悪口を考えてみた。
「牛丼に乗せるチーズ探してるの?」
解説:牛丼は何よりも時短のファストフードである。
チャレンジするために食事の時間を削る人たちの相棒だ。
チーズは書籍「チーズはどこへ消えた」より消えたチーズを探すネズミと、再現をまつネズミの話から。
ターゲット:ダブルチェックダブルチェックおじさん
用例がクリティカルでない。
著者がサラリーマンを2年やっていればと惜しむばかりだ。
自動計算されるエクセル書面の結果を、電卓で検算するのは珍しくない。
そもそもエクセルに頼ったり、検算するのは「人はミスをする」という前提に立っている。
ではエクセル(コンピュータ)は?と思うが、後の項目でもある通りコンピュータもミスをする。
それ以前にエクセルの自動計算を描いたのが人であるから、ミスしやすいのだ。
このエクセルに書いて返信してね。というのに
- 都合の悪い数字だから、途中計算を手で直して持ってくるやつ。
- 他からファイルコピーして、参照値がズレているやつ。
- 途中にコメントをいれて、関数が壊れたままもってくるやつ。
エクセルが神ソフトであることは間違いないのだが、参拝する人がよく間違うので、エクセルはよく間違うのだ。
ちなみに筆者が直面したこういった例は、お客様からもらった申請書を4人(+上司)でチェックするというものだった。
Aさんは赤、Bさんは青のようにマーカーペンを持っており、チェックの証跡としてマーカーを引くのだ。同じところを。4人が。
これを誰もが知る大手企業でやっていたのだから驚いた。
ターゲット:ちょっとおくれますおじさん
用例がやや足りないと思う。この悪口が刺したい人はやらなきゃいけないことがあるのに他のことに手を出した結果自分の首を絞めてしまう人だ。
本書の用例ではただただ怠惰な人なので、クリティカルヒットしない。
この悪口を利用するのは例えばこんな人だ。
「100冊の本を読んで本を書く企画をはじめ、夏から読み始めて翌年の2月には本の校了が控えているのに年末になっても50冊しか読んでない状態で、引っ越したり、新たなラジオ番組を始めたり、Webサイトの機能を自分で足し始めるような衒学者」
ターゲット:人脈自慢おじさん
解説として例を挙げる対象がそもそも対である。
寿命は短いが人脈を増やし多くの子孫を残すタイプと、子孫は少ないが高い能力と生存力をもつタイプ。
片方だけとらえて悪口とするにはやや不正義だ。(著書の悪口は前者へ向けられる)
せっかくなので、後者向けの悪口を考えてみた。
「無観客ライブしてそうですね」
解説:芸は身を助くというが、観客がおらず助けてくれる人がいない様
「オフ会0人でも強行しそう」でも。
ターゲット:ネットで見た言葉すぐ使うおじさん
解説と用例の組み合わせがやや適正でない。
スタックと語彙力として、机の上と本棚を例に挙げているが
最近使ったものなら机の上にあるのが当然であり、使えそうな語彙を探すとき本棚にいかず手近なところから当たるのは当然の動きであろう。
僕が悪口として建てるならこうだ。
「メインメモリがキャッシュなのかよ!」
解説:キャッシュは素早く応答するために、情報を一時的に保有する機構。
ただし再起動で情報がクリアされる。(お金のキャッシュではない)
ターゲット:結婚はいいぞおじさんへ
解説内では、上の人に対してマウントをとってめっちゃ怒られた。というのが趣旨なのだが、おおよそ「結婚はいいぞおじさん」は立場「上」からくるので用例としてあってない気がする。
著者は自身が上位5%には入る!と豪語していたので、下から5%の僕とは違うセンスなのかもしれない。
著者が所帯を持ち、家庭のぬくもりや子供のかわいさを知る頃、
「何がいいかわからん」としゃべる若者に対して何を言うかぜひ待ちたい。
ターゲットになるおじさんはよく結婚を勧める理由に「子供はかわいい」というので、いつもこう言うことにしている。
「奥さんはかわいくなくなったんですか?」
みんな笑いながら「ん?」と言ってくれて話が終わるのでオススメだ。
ターゲット:きれいごとおじさん
下から5%の僕にはモンブラン・ブランの論文を読むことはできなかったが、
言及されるXX力とやらは、個人の能力に依存するので、私は苦しいからあなたも苦しいは通らない可能性が高いと思う。
あと用例は上司の扱いがAさん、Bさんで異なっている悲しみが含まれている。
ターゲット:毎朝あたりまえ体操するおじさん
情報量ゼロだね。がついたらもう単なる悪口なのよ。
そして、前振りの部分が余剰すぎる。
情報量とは何かの説明に4ページも使っている。この衒学者が。
ターゲット:オフ〇コ希望おじさん
内容はさておき、オフ〇コ希望おじさんの話はどうあってもここじゃない。
6章にクソリプしてくる人への悪口があるので、あきらかにそっちでやるべきである。
MECE警察はどこへいっちまったんだ。
ターゲット:盗品市場おじさん
インターネットの生まれは公園のようなものだったと記憶している。
そこに置かれたものはみんなが使っていいが、自身のものだということをはばかられた。
しかし、法整備が追いつくより早く違法コンテンツが社会問題化したことは言うまでもなく、今も漫画村だの跋扈している。
僕が悪口を言うならこうだろう。
「韓国で農業始めるつもり?」
解説:韓国では種子法を無視して日本の農作物を韓国名をつけて売り始めたことから
ターゲット:漫画好きおじさん
この内容には異議がないが、一言いいたい。
「マンガ好きを豪語するやつが進めてくる漫画、尖りすぎてて面白くない」
水曜日のダウンタウンでも似たような特集があり、見事に滑っていたのだがマンガ好きのおすすめ漫画ほどあてにならないものはない。
マンガ好きを自称する人間が「鬼滅の刃」とか「ドラゴンボール」とかを薦めてきた試しがない。
彼らは大衆受けを避け、よりマイノリティで通好みの漫画をどや顔でチョイスしてくるのだが、それは「通好み」に過ぎないことを彼らは気づかない。気取り屋どもが!
ターゲット:好きなだけ食べていいんだよおじさん
解説引用の君主論で描かれる「組織の長はケチであれ」は非常によくわかる。
僕自身も経験がある。
簡単に言えばお年玉だ。子供に挙げるお年玉。毎年1000円上げていたものを、翌年500円には出来はすまい。
ボーナスが入ったからと、ある年だけ5000円上げた翌年、1000円には戻せない。
子供は「少なくとも1000円はもらえる」と思っているからだ。
また悪口が「XXX失格だね」は、悪口として聞こえないやつのほうがどうかしてる。
さすがにストレートすぎるし、せっかくだし考えた。
「ウルトラマンを支える人みたいですね」
解説:ウルトラマンを制作していた円谷プロダクションは大ヒットに恵まれたが、どんぶり勘定で経営していたためブームの終焉に伴い大赤字を出してしまった。
ターゲット:1円まで割り勘おじさん
解説・用例が完璧である。
ここまでクリティカルな用例は見かけなかった。
やや「ギムワリ」に義務と割り勘の語感が入ってしまっているが、素晴らしい。
ターゲット:倦怠期おじさん
好きになった箇所から嫌いになるのはよくあるので仕方がない。
先のスタックをもとに悪口を考えてみた。
「愛をキューにしまっちゃったんだね」
解説:キューというのは本書の中でも解説があるが、ところてんを作るときのアレ。
先入れ先出し方式。つまり最初に入れたものからあふれ始める。
ターゲット:童貞こじらせおじさん
この本が1年発売が遅かったら「トランプならジョーカーだね」になりそう。
ターゲット:インスタ映えおじさん
これも解説・用例が完璧である。
まず悪口に聞こえにくいし、裏の意味が4重にもなっている。
花の名前をそのまま言うと伝わるかもしれないが、言い換えが功を奏している。
言い換え図鑑を読破した著者の手腕に完敗である。
末尾を「~~ね」にすれば林原めぐみ感も出そうだ。
ターゲット:プライバシーをまもるおじさん
プライバシーの漏洩はあんまり気にすることないよ。みんな君に興味ないよ。からの論調なのだが、15年ぐらい前であれば、犯罪者は卒アルまで晒される時代を見てきた僕にはやむなしの事情に見える。
ただ、ちゃんとデジタルタトゥーを知らないと迷惑系Youtuberが爆誕するので、彼らの死にざまはリテラシーとして教えるべきである。
そして何より悪口が長い!
しかも覚えにくい。とっさに出ない。
どや顔で言おうとして途中で噛んで変な空気になりそうである。
追記:高齢の方から「Facebookに僕がいる」と相談されたことがある。
写真を見るとその人の30台ごろの写真で、エピソードは本人のものらしい。
僕にはどうにもできなかったが、とりあえず怖かった。
ターゲット:夢見る中退おじさん
この項目は、著者のyoutubeのトップに上がっている代表的な動画の先頭に同じものがあるが、新しく立項したようだ。
難しい用例だったが短文で素晴らしい。
そして僕は比較的テレビを見るほうなので、よく似た例を知っている。
それを踏まえて別の悪口をしてみたい。
「まるでGacktだ」
解説:年越しの際、地球にいたくないと言って周りのメンバーと年越しの瞬間ジャンプした逸話から。
(番外)ターゲット:着飾りおじさん・忙しいアピールおじさん
著者に倣って新規に一つ立項してみた。
「寒いところから来たんですか?」
解説:シダ植物は葉脈に大きな一枚葉ではなく、葉脈に小さめな複数の葉をもつ。
これは寒い地方で日光を効率的に集める生存戦略であり、
逆に暖かい場所では葉脈に大きな一枚葉を持つことが多い。
「海外をまたにかけて大忙し」アピールをするおじさんがアラスカやロシアに出かけるのを聞いたことがない。
彼らは暖かいところが好きなのだ。
寒い地方に適した姿でなぜか暖かい地方に走る滑稽さをこっそり笑う・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
いや、立項してみたがかなり難しかった。
やはり本を書く。という行為はかなり高尚で限られた叡智を持つ人にしか許されない行為なのかもしれない。
そして僕は語彙力をスタック管理しているのかもしれない。
(番外)考えてほしかった悪口
みんなが面白がっているコンテンツの輪に入り込んで「何が面白いの?」と冷や水をぶっかけるおじさんへの悪口があってほしかった。
このおじさんは僕である。
エヴァンゲリオン、涼宮ハルヒの憂鬱、進撃の巨人など数々のビックウェーブを乗らずに見送ってきた。
実際にはブームに遅れて手に取った。
「面白くなくはない。いや面白い。だけどそんなに熱狂するほど面白い?」という状態だった。
僕は心優しく紳士なので、それをだれかに口にすることはなかったが、インターネット界隈ではよく見かける。
理由は甚く単純なものだと思う。
自分が認めていないものを多数の人間が認めているのが気に入らないのだ。
彼らへの悪口少し考えてみたがいまいち火力もインテリもなかった。
「国へ帰るんだな。おまえにも家族がいるだろう?」
解説:「お客様は神様です。」から人と神様で住んでる場所が違うんだから
早く神の国に帰れよ。という意味。
おわりに
本書は教養と悪口を合わせた娯楽書であるが、ぶっちゃけ本書を読んでこれらの悪口を使うことはないだろう。
悪口にしては文言が長すぎるのだ。どちらかというとこんな人昔もいたよね。というのを教養から得る体裁になっている。
いつかのだれかを思い出して、「次会ったらこう言ってやろ」と二度と会わない人との妄想に一人笑う。そんな娯楽書だ。
本書の頭に書いてある通り、悪口というのは口にするのは簡単だが、それと知られず言うのは難しいもろ刃の剣である。
悪口を言うとき、人は最もダメージを受ける言葉を選ぶ。
そして「ダメージを受ける」は何を基準にするか? それは自分である。
自分が言われるといやなことを相手に向かって言う。
「バカ」という人は、頭の良し悪しを評価されると怒り、
「ハゲ」という人は、自身の容姿を評価されると怒るだろう。
敵に塩を送るどころか武器を送っている。
これを避けるためにも、一風変わった悪口というのは必要なのかもしれない。
本を買って2日のうちに最後まで読み切るというのも初体験だった。
堀元単位で0.025DAIGOだ。
初めて本のレビューをするし、ブログも書いてみた。
それほどの魅力がこの本にあるかと言われれば、それはわからない。
単純に僕が著者のファンなのだ。
ファンのくせに12月末の発売日の本を今頃レビューとは何事か!と思うかもしれないが
- 身近な書店に置いてなかったこと。
- Kindleで買うか迷ったこと。
- FireHDがよぼよぼだったこと。
- 1月からのコロナ爆発が怖かったこと。
もろもろあるが、僕は優柔不断で行動が遅い人間であるということだ。
もしこんな記事を最後まで読み、かつ本書を持っていない人は、
まずは著者のYoutubeを、いや、まずはその切り抜きチャンネルからご覧になってはいかがだろう。